2015-10-1
オチビサン歳時記 第12回 〜金木犀〜
どこからともなくただよってくる優しく清々しい香り。
花が見つからなくても、すぐにそれとわかる金木犀。
秋がくるたび、オチビサンたちをうっとりさせています。
パンくいだけは、べつの匂いにひかれているようですが……。
北海道では金木犀はほとんど見られないのだそうで、北海道のみなさん、今回はごめんなさい。
チョウは、金木犀の香りがきらい!?
ジャスミンやライラック、ヒイラギなど、香りのよい花が多いモクセイ科の植物。なかでも金木犀は、特別な花ではないでしょうか。姿は目立たないのに、甘い香りで秋をしらせるこの花の開花を、待ち望んでいる人は少なくないでしょう。
なぜ金木犀は香るのか? こたえはかんたん。花は、花粉を運んで受粉を助けてくれる虫を誘うために香ります。けれど、あれほどよい香りにもかかわらず、金木犀にチョウがとまっている光景はあまり見ないと思いませんか?
じつは金木犀の香りには、チョウがいやがる成分がふくまれているらしいのです。理由は定かではありませんが、こう考える人もいます。チョウは香りや色に誘われ、様々な花にひきよせられる虫。そんな虫では受粉効果が下がるので、金木犀はチョウを避けているのではないかというのです。ではどんな虫を頼るのかといえば、一部のハナアブだけとする説があるいっぽう、夜に蛾がくるという人もいます。ともかく、花粉をたくす虫を選んでいるらしい金木犀。ぜひ観察して、真相を確かめてみてください。
ただ、せっかく花粉を運んでもらっても、日本では残念ながら金木犀には実がなりません。金木犀は雌雄異株。中国から日本に入ってきた株は雄の木だけで、挿し木で増やしてきたのです。ちなみに、金木犀の渡来は江戸時代とされますが、国内には樹齢800年を超える樹もあり、来歴も謎。そしてもう一つ不思議なのが「二度咲き」という現象です。金木犀は、年によって開花のピークが二度あり、その理由もよくわかっていないのです。
栗のにおいをかぎながらパンを食べるパンくいもかなり謎ですが、それ以上に、金木犀は謎めいた植物なのですね。