2015-10-15
オチビサン歳時記 第14回 〜ミズヒキの花〜
キクやコスモスなど、秋は美しい花がたくさん咲きます。
目立つ花にかくれて、ひかえめに咲いている草花も多いのですが、
なかなか気づいてもらえません。
オチビサンと仲間たちが素敵なのは、そんな植物にも心を寄せるところ。
ナゼニが見つめているのは、初秋に咲くミズヒキです。
アレにそっくりな花ですよ。
秋の訪れを祝う 静かに咲く紅白のミズヒキ
ミズヒキはタデ科の多年草。木漏れ日のさす林や藪、庭の木陰など、薄明るい場所を好む野草で、長くのばした枝に小さな花をつけます。各地でよく見られるので、雑草と思って見過ごしている人も多いかもしれません。花の大きさは1㎜ほどで、花びらに見えるのは、4つに裂けたガク。外側は濃い赤で、裏返すと白い色をしています。紅白の花が長くのびた枝につくようすは祝儀袋などに飾る水引にそっくりで、その名がつきました。
かひなしや 水引草の 花ざかり
正岡子規の句です。花の盛りがきてもさほど目立たないミズヒキ。たしかに、群生ならまだしも薄暗い木陰に一株植わっているだけでは、満開に気づかない人も多いでしょう。それでもこの秋の野草を愛する人は多く、生け花や茶道で用いる茶花にもそえられます。主張せず、どんな花とも合いますし、ミズヒキだけを一枝さしても、静かな美しさを感じます。
きっとナゼニも、風にゆれるミズヒキを見ながら静かな秋を感じているのでしょうね。ちなみに、葉にとまったカネタタキはコオロギの仲間で、体長は1㎝前後。雄が羽をたてて「チッチッチ」と鳴きます。その音色がカネをたたくようだと、名がつきました。カネは「鐘」ではなく「鉦」。お皿の形をした金属製の楽器です。
さて、ミズヒキは花後に実をつけますが、こちらはいやでも目立ちます。いわゆる“ひっつき虫”で、動物の体や人の衣服にくっつくのです。ナゼニが秋に野山を歩いたら、きっと体中にミズヒキのタネをつけてしまうことでしょう。あちこちに運んでふやしてあげてくださいね。