2016-1-21
オチビサン歳時記 第25回 〜炭〜
オチビサンが火鉢にくべている炭。
私たちの日常生活ではあまりなじみのなくなってしまった燃料ですが、
その火はおだやかで、
見つめていると、心までとけていくようです。
オチビサン、きょうもそんな炭火に話しかけていますよ。
木を焼く炭。なぜ燃えずに作れるの?
炭は、植物を原料に作ります。ナラやクヌギ、カシやブナ、タケなどを焼いて作るのですが、なぜ焼いているあいだに燃えてなくなってしまわないのかと、不思議に思う方もいるかもしれません。
木は、火をつけると、やがて燃え尽きて灰になります。けれど炭作りでは、酸素が入っていかないような状態で木を蒸し焼きにします。木にふくまれている酸素と水素がむすびついて水になり、あとに残るのは炭素。これが木炭です。火をつければ、空気中の酸素とむすびつき、煙も出すことなく燃えるというわけです。
日本では、電気やガスが普及するまで、暖房や炊事の燃料に、炭は大活躍していました。平安時代の『枕草子』にはこんな一節があります。
「冬はつとめて(中略)いと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるもいとつきづきし」
(冬は早朝がいい。とても寒いなか、急いで炭をおこして廊下を渡っていくのは、冬に似つかわしい)
今も火鉢を使うオチビサンには、清少納言の気持ちがよくわかることでしょう。やはり「炭」で連想するのは冬。江戸時代中期の俳人・与謝蕪村はこんな句をのこしています。
炭うりに鏡見せたる女かな
町には、冬になると炭売りが現れました。自分で焼いた炭を売りにきたのか、その顔は真っ黒。鏡を手に大笑いしているようすが目に浮かびます。
ところで、炭には黒炭と白炭の2種類があることをご存知ですか。大きな違いは、消火のしかた。黒炭は、窯の中で火を消し、冷えてから取り出しますが、白炭は高温のうちに窯の外へ出し、灰をかけて急速に消火します。白炭の代表といえば備長炭。着火はしにくいものの、安定した火力で長時間燃えるので、うなぎや焼き鳥屋さんで使われています。