2016-3-17
オチビサン歳時記第32回 〜コブシ〜
春かと思えば、また冬の寒さがぶりかえし
豆粒町のオチビサンも、マフラーがなかなか手放せません。
それでも元気に外へ出て、春の足音を確かめています。
この木が一面真っ白に輝くのも、もうまもなく。
北国の春を歌った、あの演歌でもおなじみの花ですよ。
コブシのつぼみは、みな同じ方向を向く!?
コブシは、モクレンの仲間の落葉広葉樹。北海道から九州まで各地で見られ、公園の木や街路樹、庭木としても人気があります。その魅力は、なんといっても早春に咲く花でしょう。灰色だったこずえに、純白の花をいっせいに開きます。葉よりも前に花が咲くのは、梅や桜と同じ。甘い香りを漂わせ、目にも鼻にも春を教えてくれます。ただ、10mを超えるほど成長する木なので、高い位置に咲いていると、花の香りに気づきにくいかもしれません。つぼみや、まとまってつく果実の形が人の握り拳に似ているため、その名がつきました。
コブシは、春に農作業を始める目安として、昔から親しまれてきました。「コブシの花が咲いたら田植えの準備を始める」という地域では、「田打ち桜」とも呼ばれています。「コブシが咲いたらイモを植える」とか、「味噌の仕込みを始める」など、地域によってさまざまな言い伝えが残っています。また、「コブシの花がたくさん咲くと、その年は豊作」「コブシの花が下向きに咲くと、その年は凶作」など、作物の出来を占う指標としても使われてきました。天気予報などなかった時代、人々は身近な植物を観察しながら、その年の天候のサインを読み取ろうとしていたのですね。
観察といえば、毎日コブシを見上げているオチビさんなら、きっと気づいていることでしょう。コブシのつぼみは、とがった先端が、みな同じ方向を向いているのです。その方向は「北」。じつはコブシの花には磁石が……と言いたいところですが、開花に向けてつぼみがふくらんでいくとき、暖かい日差しを受ける南側が先にふくらみ、そのために先端が北を向いてしまうというわけです。モクレンや、コブシによく似たタムシバ、ネコヤナギなども同じで、「方向指標植物(コンパスプラント)」と呼ばれています。見慣れた植物も注意深く観察すると、不思議が隠れているものですね。