2016-6-16
オチビサン歳時記第43回 〜タチアオイ〜
この季節になると、あちこちで花を開くタチアオイ。
オチビサンの暮らす鎌倉でも、
横須賀線の沿線などに、群生しています。
紫陽花目当ての観光客も思わずふりむかせるこの花は、
「梅雨葵」と呼ばれることもあるんですよ。
気象庁より当たる!? タチアオイの梅雨明け宣言
白、桃色、赤、濃い紫……梅雨を彩るさまざまな花色のタチアオイ。一重だけではなく八重咲きもあり、2mにも成長する背の高い草は、遠くからでもよく目を引きます。
原産は中央アジアとされ、イラク北部の洞窟から、ネアンデルタール人の骨とともに、タチアオイの仲間の花粉が見つかっているそうです。日本には中国を経て伝わりました。漢名は「
」。「アフイ(アオイ)」の名は、太陽を仰ぐような姿からついたと言われています。
梅雨とともに咲き始める印象の花ですが、佐賀県には、「アオイの咲き終わりが、ながせの晴れ」という言い伝えがあるそうです。「ながせ」とは、梅雨のこと。タチアオイの花は、下から一輪、また一輪と咲きのぼっていきますが、ついに茎のてっぺんまで咲いた頃に梅雨が明ける というのです。この言い伝えは、各地に残っています。近所にタチアオイが植わっていたら、ぜひ観察してみてください。
ところで、アオイというと徳川家の紋章を思い浮かべる人も多いでしょう。葵の御紋のアオイは、アオイ科のタチアオイとはまったく別種の、ウマノスズクサ科の植物。山野に生える小さな多年草で、フタバアオイといいます。京都の葵祭のアオイも、源氏物語の「葵の上」のアオイも、フタバアオイ。本来葉は2枚で、徳川の三つ葉葵は、これを3枚の葉にデザインしているのです。
フタバアオイの花はうつむき加減で控えめですが、アオイ科の花は、大輪の花を元気に開きます。フヨウ、ムクゲ、ハイビスカス、ワタなど、美しい花をもつ仲間で、シワの寄った柔らかな花弁は、夏の着物にされる
のよう。野菜のオクラもアオイ科で、手折って活けたいような美しい花を開きますが、早朝に咲いた花は昼過ぎにはしぼんでしまいます。タチアオイの花の命もあっという間。そんなはかなさも美しさのうちですね。