2015-11-26
オチビサン歳時記 第19回 〜モミジ〜
秋も深まって、紅葉が美しいですね。
オチビサンとナゼニも、赤く染まった木を見上げてうっとり。
ところで、この木の名前をご存知ですか?
どこからどう見ても、モミジ?
じつは、植物学上「モミジ」という科や属はないのです。
「いろは…」と数えたイロハモミジ
私たちが「モミジ」とよんでいるのは、カエデ科カエデ属の落葉樹。古来、秋に山の木々の葉が色づくことを「もみづ」などと表現し、とくに紅葉が美しいカエデの仲間を「モミジ」とよぶようになりました。ちなみに、「カエデ」は「カエルデ」。切れ込みの入った葉の形がカエルの手に似ていると、昔の人は感じたのですね。
本来モミジはカエデの別称ですが、園芸の世界では、葉の切れ込みが深いものをモミジ、浅いものをカエデとよびます。モミジの名をもつ代表がイロハモミジ。日本にとても多いカエデなので、オチビサンたちが見上げているのもおそらくこれでしょう。切れ込みでわかれた葉を「いろは…」と数えたことから、その名がつきました。
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
(不思議の多い神代の昔でも、こんなことは聞いたことがない
竜田川に紅葉の葉が浮かび、水を紅色に絞り染めにしているなんて)
平安時代の貴族在原業平が、竜田川の紅葉を描いた屏風絵を見て詠んだ歌です。奈良県の竜田川はモミジの名所で、その流域にあった竜田山とともに、多くの歌に詠まれてきました。竜田山には、日本の秋をつかさどる女神「竜田姫」がすんでいて、姫が着物の袖をふると、山々が赤く染まっていったと言われています。
モミジは谷あいの川のそばに自生する植物で、昔は山の中へ行かないと見ることができませんでした。今では公園や庭などで気軽に愛でることができますね。葉を落とすまでのほんのひと時、竜田姫が袖を振り終わる前に、モミジが見せる最高のきらめきを味わいましょう。