2016-2-11
オチビサン歳時記第28回 〜スイセン〜
立春もすぎ、暦の上ではすっかり春ですが、まだまだ寒いきょうこの頃。
椿や梅など、いち早く咲く花が、春を知らせてくれますね。
スイセンもそんな花の一つです。
きょうは、おじいとジャックが、豆粒町の豆ガ谷までおでかけ。
一面に咲くスイセンに、ふたりは何を想うのでしょう……。
水と縁の深い、香り高き花
スイセンは、ヒガンバナの仲間。南ヨーロッパや地中海沿岸などが原産の植物です。日本には、中国を経て伝わりました。初めて書物に登場するのは、室町時代に編まれた辞書の『下学集』。それより以前の万葉集などには出てこないため、渡来したのは平安の終わりから室町時代と考えられています。どのように伝わったかは定かではありませんが、スイセンの名所が海沿いに多いことから、球根が波に乗って流れ着いたと考える人もいます。群れて咲くのは、地中で球根が増えていくからです。
『下学集』には、和名を「雪中華」と説明されているスイセン。いまでも、「雪中花」の別名を持っています。スイセンは、漢名の「水仙」を音読みしたもので、中国では、水辺に咲く姿を仙人にたとえ、その名がついたと言われています。
スイセンと水との関係は、ギリシャ神話でも有名です。高慢な美少年ナルキッソスは、泉の水鏡に移った自分の姿に恋をし、いつまでも見つめ続けて、そのままやつれて息絶えました。そうしてスイセンに姿を変えたと伝えられています。スイセンが水辺でうつむいて咲くのはそのためなのだそうです。この話は、「ナルシズム(自己愛)」の語源となりました。
さて、スイセンは、可憐な姿とうらはらに、毒をもっています。ニラとともに葉を食べてしまったり、タマネギと勘違いして球根を食べてしまったりして、食中毒を起こす人が毎年のようにいます。死ぬこともあるほどの毒なので、注意しましょう。花びらの内側に「
」という部分をもつのも、スイセンの特徴です。おじいとジャックが見つめているスイセンは、白い花びらに、黄色い副花冠。種類はニホンスイセンでしょうか。ジャスミンやヒヤシンスにも似た芳香が、絵から伝わってくるようです。