2016-4-7
オチビサン歳時記第35回 〜スミレ〜
桜が咲いて、ケヤキも芽吹き
上ばかり見て過ごしがちな春。
足元に、小さな花が咲いていることにお気づきですか。
都会でもどっこい生きている、スミレです。
ナゼニは、この花がとても好きみたい。
いっしょに観察してみましょう。
開かない花のなかでタネを作る!?
春に花を咲かせるスミレ。可憐な姿にぴったりの響きですが、一説によれば、大工さんが使う「墨入れ」に由来した名とも言われています。材木などに線をつけるときに使う、ちょっと不思議な形の、あの道具。スミレの花の形が似ていることから、「墨入れ」が「スミレ」に転じたとも考えられているのです。
山路来て なにやらゆかし すみれ
草
松尾芭蕉も、山の道に咲く可憐な姿に心ひかれたスミレ。身近な野草ですが、ナゼニを見習ってよくよく観察すると、おもしろい特徴がいくつも見つかります。
まず、茎がありません。地面から伸びているのは葉と花茎。紫色の花は、しおれた後も、タネを作っている様子はなく、そうかと思えば、背丈の低い緑色のつぼみのようなものは、いっこうに咲く気配がないのです。このつぼみは、じつは「閉鎖花」と呼ばれる開かない花。閉ざしたままの花のなかで、自家受粉を行い、スミレは実を結ぶのです。
タネが熟すと、うつむいていた閉鎖花は上を向き、ある日突然、3つに割れて開きます。中にはタネがびっしり。すると今度は、その殻を閉じていきながら、タネをはじき飛ばします。1mも飛ばすそうですが、スミレとしては、もっと遠くに運んでほしい。そこで、アリを誘うのです。
スミレのタネには「エライオソーム」という、アリの好む物質がついています。アリは、地面に落ちたスミレのタネから、好物をはがそうと四苦八苦。そのうち巣まで運びます。そうしてエライオソームをはがしとると、用のないタネは、外に捨てるのです。こうしてスミレは、遠く離れた場所で芽を出せるというわけです。
日本に生えるスミレの仲間には、そのものずばり「スミレ」のほかに、50以上の種類があります。タチツボスミレ、ニオイスミレ、アリアケスミレなど、花の色や葉の形もそれぞれ違うので、ぜひ観察してみてください。