2016-4-14
オチビサン歳時記第36回 〜たけのこ〜
くいしんぼうのパンくいの庭に、
顔を出した1本のたけのこ。
よりによってパンくいの庭に出てしまうなんて、
飛んで火にいる……とは、このことですね。
この時季しか食べられない新鮮なたけのこ、
パンくいは、どう料理して食べるのでしょう。
神話の時代から食べられていたたけのこ
日本人はいつからたけのこを食べていたのかと調べると、なんと「古事記」の神話に、その名がありました。日本の国土や多くの神々を産んだ、イザナギとイザナミという夫婦の神様をご存知ですか。女神のイザナミは、火の神を産むと、やけどを負って死んでしまいます。妻恋しさに黄泉の国まで行った夫のイザナギ。腐った彼女の姿に驚いて逃げますが、恐ろしい追手がせまります。そのとき、イザナギが櫛を投げつけると、たけのこが生えて、追手がそれを食べている間に逃げたと書かれているのです。黄泉の国の住人も、たけのこの味を無視することはできなかったようです。
“たけのこ”とひと口に言っても、種類はさまざま。昔から日本に生える
や根曲がり竹は、5~6月ごろにたけのこを出します。じつは、たけのこの最盛期は初夏。夏の季語だということは、知られていないかもしれません。春にたけのこを出す孟宗竹は、江戸時代に中国からもたらされました。細長いたけのこが多いなか、孟宗竹のそれは大きくて肉厚、白くて柔らか。とてもおいしいので、各地で栽培されるようになりました。ちなみに孟宗とは、中国の三国時代の人。たけのこを食べたがる母のため、冬の竹林で雪を掘りながら願ったところ、たけのこが出たという故事が、名前の由来になっています。
孟宗竹のたけのこは、収穫のしかたが独特です。真竹や根曲がり竹は、土からすっかり出た状態でとりますが、孟宗竹は、土中に隠れているものを掘り取ります。そのほうが、えぐみが出にくいから。収穫したての「朝掘り」がもてはやされるのも、掘り取って時間が経つと、えぐみが増してしまうためです。土に隠れていたものは穂先が黄色、土から顔を出していたものは、陽に当たって穂先が緑色なので、買う際の目安にしてください。
パンくいのたけのこは、すでに穂先が緑ですね。でも大丈夫。米ぬかで煮てしっかりえぐみをとれば、おいしく食べられますよ。