2016-6-23
オチビサン歳時記第44回 〜梅干し〜
ひとつのセリフもないのに、
オチビサンたちのしていることがわかってしまうのは、
きっと、毎年同じ季節に繰り返されてきた、
日本人になじみのある行事だからでしょう。
オジイたちの梅干し作り、
いい塩梅に仕上がるといいですね。
枕草子にも書かれた、梅を食べたすっぱーい顔!?
梅雨の時季、その年にとれた梅を使って梅酒や梅漬けなどを作る作業を、「梅しごと」と呼びます。オチビサンたちも、庭の青梅を収穫して、漬けている真っ最中。きっとこのあと、梅干しにするのでしょう。土用干しの名のとおり、干すのは夏の土用の三日三晩。できた梅干しは熟成させるとおいしいと言いますが、オジイ秘蔵の“昭和62年モノ”の梅干しは、いったいどんな味なのでしょう。
梅干しがいつごろ日本で作られ始めたかは定かではありませんが、平安時代の『枕草子』には、「にげなきもの」として、こんな文章があります。「歯もなき女の梅食いて酸がりたがる」。歯のない老女が、梅を食べて酸っぱく感じている顔は、似つかわしくないというのです。
江戸時代には、旧暦の4月(今年で言うと5月の中頃)になると、天秤棒で梅漬け用の青梅を売る実梅売りが町に現れました。梅干しができあがると、それを桶に入れて売り歩く子どももいて、「梅ぃほうしや、梅ぃ干し~」と売り声が響いたそうです。江戸後期の農書には、梅の木にのぼって実をもぎ、巨大な樽にいくつも漬けている農家の仕事が描かれています。昔はどこも自宅で漬けたとよく言いますが、加工品を買ってすませる人もいたようです。
梅はその日の難逃れ。朝、梅干しや梅漬けなどを食べれば、その日いちにち、災いをよけることができると言われます。梅の酸っぱさはクエン酸などの有機酸。消化吸収をよくし、疲労を和らげ、抗菌や防腐効果も期待され、梅干しは保存食のなかでも、薬のような役目も果たしてきました。家族の健康のために、欠かせないものでしたから、梅干し作りを失敗したら、それはもう大参事。「梅干しを腐らすと不幸が起きる」という言い伝えが残るのも無理はありません。オジイたちも、梅がカビないように、手塩にかけて世話することでしょう。