2015-8-27
オチビサン歳時記 第八回 〜萩〜
シロツメクサの花冠、タンポポの風車
ドングリのコマやオオバコの相撲……
おもちゃなどなくても、草花遊びで日が暮れた子ども時代。
オチビサンは、懐かしい記憶もよびおこしてくれます。
この日、3人が手に取ったのは小さな丸葉。
秋の七草のひとつ、あの植物です。
万葉集でもっとも多く詠まれた花
「夏の夕暮れ」というナゼニの言葉に、「萩なのに夏?」と首をかしげた方もいるでしょうか。草冠に“秋”と書く萩ですが、じつは夏の暑い時期から、すでに咲いているのです。
たとえばヤマハギが咲くのは7~9月。全国の山野に自生し、庭木などにも用いられる萩です。「夏萩」の異名をもつのはミヤギノハギ。7~10月に咲き、その重みでよくしだれる美しい萩です。宮城県では県花として親しまれています。
ゆれる枝の先に、こぼれるように咲く紅紫色の花。その優美さで、萩は古くから愛されてきました。なんと、万葉集に詠まれた花の歌のうち、もっとも数が多いのが萩なのです。2位の梅をおさえ、142首がおさめられています。なかでも有名なのは、歌人・山上憶良の詠んだ、この歌でしょう。
秋の野に咲きたる花を
指折り
かき数ふれば
七種
の花
萩の花
尾花葛花
なでしこの花 をみなへし また
藤袴
朝顔の花
尾花はススキ、朝顔はキキョウとされ、この歌が秋の七草の由来となりました。七種のなかで、まず萩があげられているところに、日本人の萩好きがつたわってきます。
ところで、葉を手折ったとき、オチビサンたちは気づいたでしょうか。萩の葉は、3つで1まい。「
」といって、本来1まいの葉が3つの小さな葉に変化したものなのです。手に取ると、まるで仲よし三人組のよう。そして萩の葉は、秋が深まると鮮やかに黄葉します。オチビサンたちの遊ぶ路地が黄金色に染まる日も、そう遠くはなさそうです。