2016-5-19
オチビサン歳時記第40回 〜桐〜
同じ頃に咲く、紫色の花。
遠くの山に見えるのなら、まちがえても無理はありません。
でも、珍しくナゼニがまちがえたものだから、
オチビサンはちょっとうれしいのかもしれませんね。
藤の花に見えたのは、日本人にとても身近な木の花でした。
硬貨やパスポートにも見つかる、不死鳥の止まり木!?
実物は見たことがなくても、身近なものの図柄として、いつも目に入っている桐の花。じつは500円硬貨の図柄です。パスポートをお持ちの方は、写真のページを開いてみてください。写真の上下に桐の花の紋章が見つかることでしょう。じつは桐は、日本政府の紋章なのです。テレビで首相が会見を行うとき気をつけて見てください。演説台の前面に、桐の花の紋章がついています。
桐紋は、足利尊氏や織田信長、豊臣秀吉など、時の権力者が用いてきましたが、もとは天皇家が使い始めたもの。平安初期の嵯峨天皇が、衣類に用いたと言われています。古代中国には、徳の高い天子(帝)が現れると、霊鳥の鳳凰が出現するという伝説があり、鳳凰がただひとつ止まる木が、桐の木だとされているのです。花札の模様を思い浮かべてください。イノシシやシカなど、実在する動物たちが描かれるなかに、伝説上の生きものである鳳凰が混ざっています。ともに描かれている植物は、もちろん桐。ちなみに、桐は12月の札で、実際の花の季節とは違うのですが、「これっきり」という意味の「キリ」にかけていると言われています。
桐といえば、着物や骨董品など、貴重品をしまうタンスや箱の材料としても知られています。桐の材木で作った家具や箱は、火に強く、防湿性も高いためです。湿気や乾燥によるゆがみや伸縮も少なく、引き出しや箱などが、ぴっちりと締まるように作れるそうですし、軽くて加工もしやすいのだとか。しかも桐の木は成長が早く、かつては、女の子が生まれたら桐の木を植えるという地域もありました。嫁ぐ頃にはその桐も育って、タンスにできたのだそうです。
これから暑くなると、オチビサンたちも下駄で出かける機会が増えるでしょう。そのときは、ぜひ桐の下駄で。軽いのに丈夫で、肌触りもいいですよ。