2016-6-10
オチビサン歳時記第42回 〜ビワ〜
桃やりんご、柿や栗なら知っていても、
ビワの旬を聞かれたら、首をかしげる人も少なくなさそうです。
ビワが熟すのは初夏。
冬に花が咲き始め、半年待って、
やっとあの爽やかでみずみずしい果実を味わえる季節になりました。
オチビサンも、もぎたてをおいしそうに食べていますよ。
長崎でまかれた、たった一粒から始まった
ビワは、バラ科の常緑果樹。成長すると10mにもなる高い木です。日本には昔から生えていたそうで、10世紀に書かれた薬物辞典『本草和名』には、「比波」の名で登場します。当時のビワの実は、たいへん小さなものだったそうです。今でも野生のビワの実はピンポン玉くらいしかなく、タネは大きいので、食べるところはほとんどありません。
私たちが食べている大きなビワは、江戸時代末期に中国からもたらされました。長崎で女中として働いていた三浦シオという人が、中国の通訳からもらったビワのタネを生家にまいたのが始まりで、やがて栽培が盛んに行われるようになり、現在の主流品種「茂木」へと発展したのです。いまでも、日本一の産地は長崎県です。ちなみに「ビワ」という名は、実の形が楽器の「琵琶」に似ていることに由来するという説があります。
食べておいしいビワですが、薬効もあり、古来より漢方薬の材料として利用されてきました。より身近なのは、「ビワの葉茶」でしょう。ビワの葉を乾燥させて煎じたもので、江戸時代から「
」として人気がありました。夏になると、江戸の町には「枇杷葉湯売り」が売り声を響かせ、旧暦8月下旬(秋)まで商いしたそうです。なぜ夏に売り始めたのかというと、ビワの葉茶には、体を冷やす効果があったから。今年の夏は、冷たい飲み物の代わりに、ぜひビワの葉茶をためしてみてください。おなかが下った時にも効くそうです。
ところで、食べたビワのタネをまこうというオチビサンは、知っているでしょうか。「桃栗三年柿八年」には続きがあって、「枇杷は九年でなりかねる」そうです。ビワは、タネをまいて9年で実がなるのかならないのか!?